モンキーハンティングで「発射音が聞こえてから猿が落ちる」場合

モンキーハンティングで「発射音が聞こえてから猿が落ちる」場合

高校物理の演習問題に「モンキーハンティング」というのがあります。「猿を狩る」という物騒なタイトルですが、こんな設定の問題です。

  1. 猿が木の上に居る。
  2. 離れた地上から猟師が銃で猿を狙っている。
  3. 猟師が弾丸を発射すると同時に、猿が木から落ちる。
  4. 猟師はどういう角度(図のθ)で弾丸を発射すれば、猿を仕留めることができるか?

今回は、この設定にさらに改訂を加えて計算をしてみました。まずは普通の設定の紹介を行い、続いて改訂を加えた計算について紹介していきます。

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まず普通の設定では

ちなみになぜ「どこを狙うのか」ということを考えるかというと、図にも示したように、弾丸は飛行中に少しずつ落ちていくわけです。その落下具合を計算に入れないといけないでしょう。しかし一方では猿も落下していきますので、弾丸の落下と猿の落下がうまくかみ合わなければ命中しません。弾丸の速度が速ければ弾丸はあまり落下しませんが、短時間で弾丸が猿に届くので、猿の落下距離も短いですね。そんなことも考えないといけないでしょう。

例えば次の三択クイズではどうでしょう?

  1. 猿よりも少し上を狙う
  2. 猿よりも少し下を狙う
  3. 猿をぴったり狙う

実は計算してみると、大変面白いことに、「猿をピッタリ狙う」が答えであると分かります。この計算は省略しますが、高校物理ではポピュラーな練習問題です。例えば「科学のネタ帳」さんでも紹介されていますので、ちょっと計算してみたい!という方はこちらをご覧ください。

この記事では結果の図だけ示します。

また、弾丸と猿の動きをシミュレーションした動画をこちらに置いておきます。まず弾丸の速度が結構速い場合です。猿がほとんど落ちる間もなく、命中しています。赤い点線は、猟師と猿の最初の位置を結ぶ目印の線です。

 

弾丸の速度が遅い場合はこんな感じになります。弾丸ももう最高点を越えて地面に向かって落ち始めていますが、これでも命中するんですね。

設定を変更すると?「発射音が聞こえてから猿が落ちる」

普通の設定だと、そもそもなんで弾丸の発射と猿の落下が同時に起こるのか、若干納得ができませんね。むしろ「弾丸を発射する音が猿に届いて、その音に驚いて猿が木から手を離す」という方が起こりやすそうに思えます。

実際、同じように感じる人はそれなりに多いらしく、「モンキーハンティング 音」などと検索してみると、いろいろなサイトに行き当たります。

google:モンキーハンティング 音

例えばこちらでは「よーく狙って猟銃をぶっ放したはいいが、その音に猿が驚いて木から落ちてしまいよった。 けんども弾は猿に直撃し・・・」とありますし、こちらでは「猟師が猿に向けて鉄砲を撃ちます。すると、その銃声に驚いた猿が手を離して落ちてくる・・・」とあります。こちらでは「あるハンターが木の上にいる、サルを鉄砲で打ったらその銃撃音におどろいて木から落ちた。そのとき鉄砲の弾はサルに当るだろうか・・・」とあります。(いずれも2014/5/18閲覧)

しかし実際には、弾丸の発射と猿の落下は同時でなければ命中しませんので、発射音が猿に届いてから猿が落下を始めたのでは、猿の落下距離が足らずに命中しないはずです。実際、シミュレーションしてみると次のようになります。この図で最初にバーッと広がる赤い円は、発射音が伝わる様子を表しています。発射音が猿(緑の●)に達した瞬間に猿が落ち始めていますが、ごらんの通り弾丸の方が下を通過してしまいます(猿の落下距離が足らないためです)。

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どうすれば命中するのか?

では「発射音が聞こえてから猿が落ち始める」という設定の場合、どのように計算すればよいでしょうか?実はこれはそんなに難しくないんです。猟師と猿の距離、および音速が分かっているものとすると、「発射音が猿に届く時間」は分かります。その瞬間に、弾丸が猿の方をピッタリ向いていればいいわけです(普通のモンキーハンティングの問題になります)。

そういう条件で計算をしてみると、少々計算がしんどいのですが一応答えを出すことができます。計算過程はここに置きましたので、ぜひどなたか検算をお願いいたします。

シミュレーション動画を置いてみます。猿は緑の●です。比較のために、弾丸と一緒に落ちる猿(白抜きの緑の○)も一緒に表示しています。赤い点線と比べると、弾丸は少しそれよりも上に飛んでいって、うまく緑の●に命中していることが分かります。

 

弾丸の速度が遅い場合はこんな感じです。こっちの方が感激が大きいかもしれません。


まあ実際には弾丸の速さは音速より速かったりするみたいですので、この問題の設定自体があまり意味がないのかもしれません。ライフル銃みたいなものをイメージするのではなくて、弓矢みたいなものの方がいいかもしれませんね。

こういう練習問題は、高校生でも解くことができますので、決まり切った問題演習をするのに飽きてきたら取り組んでみるといいと思いますよ。高校物理の範囲にも、まだいろいろ面白い探求の芽は隠されていると思います。

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