大きな柔毛と小さな柔毛のお話

大きな柔毛と小さな柔毛のお話

前回の記事「柔毛でグンと広がる表面積のお話」では、小腸の柔毛を直方体に置き換えて、確かに面積が増えるということを計算してみました。柔毛を「底面が正方形で、高さが底面の1辺の長さの5倍である直方体」だとすると、次の図のように、はじめの面積の10倍だけ面積が増えるのでした。

ところで、実際には小腸は直径が数cmしかないので、この図のように高さ5cmもある柔毛が生えているはずはありませんね。ではちょっと考えてみてください。同じ面積の平面(小腸のかべ)に、大きな柔毛が少し生えている場合と、小さな柔毛がたくさん生えている場合で、合計の面積はどちらが大きくなるでしょうか?

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計算してみましょう

大きな柔毛も小さな柔毛も、形は「高さが底面の1辺の5倍」で共通だとします。説明を読む前に、ぜひイメージして、考えてみてくださいね。

では計算してみましょう。計算しやすくするために、「小腸のかべ」は1辺が2cmの正方形だとして、次の比較をします。

比較!

(a)この正方形の各辺を2等分して2本の直方体を立てた場合

(b)各辺を20等分してたくさんの直方体を立てた場合

(a)の場合は、直方体の側面1つの面積は1cm×5cm=5cm2となります。この側面が直方体1本あたり4面あり、直方体が2本あるので、合計の側面積は5cm2×4面×2本=40cm2となりますね。

(b)の場合は、(a)を10分の1に縮めた図形になっているので、直方体の側面1つの面積は0.1cm×0.5cm=0.05cm2となります。直方体の本数はどうでしょう。この図形を真上から見下ろしたところを想像すると、1列あたり10本の直方体が立っていて、それが20列あることが分かります。つまり10×20=200本の直方体が立っています。したがって、合計の側面積は0.05cm2×4面×200本=40cm2となります。

なんとどちらの場合も、増える面積は10倍で同じなんですね。ちょっと難しいですが、より一般的に考えてみると、次のような図式が成り立ちます。

また、少し考えてみると分かりますが、この「10倍」という値は直方体の高さを反映しています。もしも底面の1辺の長さと高さの比が1:10なら、増える面積は20倍になります。ですから、小腸の表面積を増やすためには、「大きさは何でもいいから、できるだけ細長い柔毛がびっしり生えている」ことが大切だと言えますね。

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柔毛の第1話はこちらです。

柔毛でグンと広がる表面積のお話

出典

この記事はちゅーピー子ども新聞 83号(2013年4月21日発行)7面に掲載した記事を加筆修正したものです。

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