「身につく電気数学」を捧げます①

「身につく電気数学」を捧げます①

1つ前の記事にございますように、「身につく電気数学」が無事に発売となりました!

この本は諸事情により出版が当初の予定よりもだいぶ延びてしまい、出版できるのかちょっと不安だったときもあるのですが、発売できて本当に良かったです。

本書を書くためには、当たり前ですがまず私が電気や数学の知識を身につける必要がありました。その入口に私を導いてくれた人をご紹介しましょう。

父がいなければこの本はなかった

まず、父がいなければこの本を書くことはできませんでした。ぜひ以下のエピソードをお読みください。

虚数を受け入れられなかった私

電気数学というのは現実世界で起こっている電気の現象を表現するための数学ですが、なぜかその数学の中には「虚数」なるものが登場します。

虚数といえば高校生の時に学ぶ人が多いと思うんですが、とにかく意味不明ですよね。

虚数単位 \(i\)(アイ)というものが出てきて、

\(i^2 = -1\)

なのだ!とかいうわけです。

え、2乗したらマイナス1になるの・・・?なるわけないじゃん・・・

高1のときに学校の数学の授業で初めて \(i\)(アイ)を習ったとき、多分そんな風に思ったはずです。

家に帰ってからこんなことを言いました。

「虚数なんて勉強する必要はない。だって \(i\) 個のりんごなどこの世に存在しないのだから」

まあ当時は数学の成績も悪く、理系か文系かでいうと文系に進むんだろうなと思っていた時期なので、多分に「数学を勉強しない言い訳」だったのかもしれません。

落ちかけていたバトンを拾ってくれた父

私の発言を聞いた父がなんと言ったか正確な言葉は覚えていないのですが、困ったような呆れたような顔で、私の考え違いを諭すようなことを述べていた・・・と思います。

それがですね、「テストに出るんだから仕方ないだろ」とか「計算ルールを覚えればいいじゃないか」という内容の発言ではなかったんですよ。ここは間違いありません。そうではなくて、なんだか「虚数は存在しない」という部分が間違っているというような印象の発言でした。

この父の発言のせいで、私は虚数を勉強しない正当性を失ってしまいました。やむを得ず虚数の(そして複素数の)勉強をし、数学の成績については別途克服することができたので、小学生の頃の夢であった「宇宙物理を勉強する」という方面へ進学できました。

本書で紹介した「オイラーの公式」あたりは、大学に合格してから入学するまでの間に(ヒマだったので)呉市立図書館に通って勉強していたような記憶があります。

そして宇宙物理を研究するためには当然、宇宙からやってくる信号を検出する機器が必要になります。そういったことを勉強するため、学生時代に電気回路についても一通り習得しました。

このような全てのことの結実として「身につく電気数学」を書けたというのは、なんだか本当に奇跡的なことだなぁと思っています。

私の持論としまして「勉強とは、過去の人類が築き上げた叡智を継承する営み」だ、という考えがあります。いわば「知のバトン」を受け継ぐことが勉強で、勉強の本を出版するということはその「知のバトン」を次の世代に渡すということに相当します。

私の父がやったことは、落ちかけていたバトンを拾って私に渡してくれるということだったのでしょう。そして私は本書を通じて、そのバトンを次の世代に渡しつつあるのだと思っています。

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「バトンをつなぐ」でいつも思い浮かべる歌

ところでこの「バトンをつなぐ」ということを思うたびに頭に浮かぶ歌があります。いい歌なのでぜひ皆さんも聴いてみてください!

「シュクフクノオト」という歌。これは今年結成20周年を迎えるボーカルユニット「万貴音」(まきね)の作品です。

音楽家として苦悩しながら曲を生み出す様や、作品を聴いて・歌ってもらえる喜びを静かに力強く表現していて、聴くたびになんだか気持ちが引き締まるんですよね。

作詞作曲の小田貴音さんによる解説ページから歌詞を引用します。

「もし君が 君の声 重ねてくれるのなら
 それは紛れもなく 僕が君の中で生きた証」

自分の命をかけて生み出した作品が誰かに届き、その人の息吹が吹き込まれて歌い継がれていく。きっとそれは音楽家にとってこの上ない幸せでしょう。

似たようなことを、本を書きながら私も思ってしまうのです。この本をきっかけにして数学ができるようになったとか、電気工事士の資格が取れたとか、何でもいいんですけど誰かの人生に明るい光を灯せたらいいなと思っています(この辺もちょっと歌詞と共鳴するところですね)。

電気数学ができるようになることで、人生に幸せが訪れる人。きっといらっしゃると思うんですよね。私が \(i\) を捨てなかったおかげで宇宙物理の勉強をする夢を叶えたように。

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