「身につく電気数学」発売に寄せて、「この人に感謝を捧げたい」シリーズの第2弾です。
この本は私にとって5冊目の本なのですが、どの本を書くにしても「読んだ人の人生にちょっとイイコトがあってほしい」と思いながら書いています。
大ベストセラーになればもちろん嬉しいですが、なったことはなく(笑)、発行部数は3000部とか9000部とかだと思います。まあそれでも累計で2万人ぐらいの人にはどれかを読んでいただけているのかな・・・?その人たちの人生に潤いだったり、興味だったり、知識だったりをもたらすことができていると嬉しいな、と思っています。
こういった心の持ちようを私に説いてくださった方に感謝を捧げる記事です。
自分の周囲を明るくする
今回ご登場いただくのは私の家族ではなく、かつ公人でもない方なので、どこのどなたかは伏せた状態で書かせていただきますね。
2008年のメモ
道に迷ったときに相談できる人がいるというのはありがたいものですが、振り返ってみると私はあまり人に相談せずに物事を進めがちだったな、と思います。その反省から、いま関係する若い人には「周囲の人に遠慮なく相談するんだよ」などと言っているのですが。
2000年頃だったでしょうか、大学院生だった私は「将来どうしようかなぁ」と漠然とした悩みを持っていました。そんなときに相談に乗ってくれた方がいて、その方と再会したのが2008年なんですよね。
そこで「一灯照隅」(いっとうしょうぐう)という言葉を教えていただいた、というメモが残っています。
この言葉は、天台宗の開祖である最澄が説いたらしい思想で、「山家学生式」(さんげがくしょうしき)という文書に源泉が見られるようです。
一隅を照す、此れ則ち国宝なり
https://www.tendai.or.jp/rekishi/index.03.html より
つまり、世の中の一人ひとりが自分の置かれた場所(一隅)を明るく照らすことが国宝であるということですね。一隅を照らす小さな光を寄せ集めると、国全体が明るくなるという意味もあるでしょう。
この思想を短く表したのが「一灯照隅」という言葉であり、さらに「万燈照国」(ばんとうしょうこく)と続ける場合もあるようです。
なぜ2008年のタイミングでこの言葉を教えてくださったのかはよく覚えていないのですが、この言葉はずっと私の心に残っており、いわば座右の銘みたいな感じになっています。まあそれだけ当時の自分にとっては必要な言葉だったのかもしれません。
思い出の場所の写真でも載せようと思ったのですがHDDの彼方に・・・。今年中に自分で撮影に行くことを誓いつつ、ネット上からお借りします。
読者の周りを照らす灯
このお話を聞いた頃、私は北海道大学主催のCoSTEP(科学技術コミュニケーター養成ユニット)という講座を受けていて、「科学や技術のことを人に伝えるとはどういうことか」などということを学んでいました。
そうこうしていたら、中国新聞社さんから「小学生向けに理科の記事を書きませんか」というご依頼があり、喜んでお引き受けしました。
その記事に加筆修正をしてwebに載せ始めたのが当ブログ「カガクのじかん」の始まりです。そうするとブログ記事を発見してくださったベレ出版の編集者さんから「本を書きませんか」とご提案をいただき、それで書いたのが1冊目の本「気楽に物理」です。
科学の本を書くというのは高校生の頃からの淡い夢ではあったので、それが現実になってものすごく嬉しかったのを覚えています。
その後、「気楽に物理」を見つけてくださった技術評論社の編集者さんのご提案で「身につく気象の原理」を書き、さらにそれを見つけてくださった実務教育出版の編集者さんのご提案で「ぼくらは『物理』のおかげで生きている」を書き…。
物理の本を出版します
などとしているうちに、本を読んでくださった方からたまに感想をいただいたり、「学校の図書館で本を読みました」と教えてくれる高校生が出てきたりして、自分が書いた本が確かに誰かに届いているんだという実感を持つに至りました。自分が書いたこの本は、いわば「読んでくれた人の周囲を照らす灯」みたいになっているのかもしれないなと。
2008年に教えていただいた「一灯照隅」が、こうして腑に落ちてきたのが、3冊目を書き上げた2016年ぐらいのことだった・・・かもしれません。
一灯照隅みたいな歌
この「一灯照隅」という言葉を、とあるアーティストに送ったことがあります。いやまあ隠す必要はないか。前の記事にも登場した、広島を中心に活動している万貴音(まきね)というユニットのラジオ番組で「元気をもらった言葉」というテーマを募集していたので、そこに送ったのです。
「自分に関わってくれる人を少しでも照らす。そうすれば、その人がまた周囲を照らす人になってくれるだろう。そんなことを思いながら毎日頑張っています」みたいなメッセージを送ったと思います。
そうすると、万貴音の小田さんから意外な言葉が。「万貴音にも一灯照隅みたいな歌があるんですよ」とのことでした。
「明日もみんな笑えるように」という歌です。まあまずは聴いてみてください。
この歌はラジオに一灯照隅を送る前から知っていた歌なのですが、何となく「平和を願う歌」みたいな印象だったので「え?この歌って一灯照隅なのか」と最初はちょっと驚きました。が、歌詞を読み込んでみると、例えばこのあたりは一灯照隅を表しているのかなと思いました。
「まだ 手の届かない場所があること ヒトがいること 分かってるからこそ踏み出せる一歩」
「顔も知らないアナタにも きっと感じられるはずだよ」
作詞作曲の小田貴音さんによる解説はこちらです。この解説を読むことで、平和を願うことがなぜ一灯照隅なのか、ものすごく腑に落ちました。皆さんもぜひ読んでみてください!
私にとっての一灯である「身につく電気数学」はこちら!

