地球と月の間に太陽系?

地球と月の間に太陽系?

先日、いわゆるネットサーフィンをしておりますと、次のような画像が流れてきました。

出典: http://i.imgur.com/Ae9hbU1.jpg

木星と土星は大きいし有名なので、すぐ気づきますね。他は何でしょうか?実はこの画像は、地球(一番左)から月(一番右)の間に、太陽系の全惑星 — 水星・金星・火星・木星・土星・天王星・海王星 — を並べたものです。

この画像が言わんとしているのは「地球と月の間に太陽系の全惑星を並べると、ほぼスキマなく並ぶ」ということです。画像の上下にあるキャプションを日本語に直すと、次のようになります。

地球と月の平均距離は384,400kmです。

(そこに惑星を並べると)

スキマは約8,030kmです。

本当でしょうか???38万kmの距離に惑星を並べたとき、わずか8000kmだけ余るということは、「ほぼピッタリはまる」と言ってもさしつかえない事態ですね。ちょっと調べてみましょう!

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とりあえず数値を調べてみます

いろんな数値はwikipediaで一応調べられますので、念のため確認してみましょう。小数点以下は鬱陶しいので省略しますね。wikipediaの各項目を調べると、「赤道面での直径」という項目がありますので、それを転記します。

距離(km) 参照
地球-月間 384,400 wikipedia:月
天体名 直径(km) 参照
地球 12,756 wikipedia:地球
水星 4,879 wikipedia:水星
金星 12,104 wikipedia:金星
火星 6,794 wikipedia:火星
木星 142,984 wikipedia:木星
土星 120,536 wikipedia:土星
天王星 51,118 wikipedia:天王星
海王星 49,528 wikipedia:海王星
3,474 wikipedia:月

※ただし土星はかなり扁平(平べったい形)になっているようでして、「北極と南極を通る直径」は108,728kmになるようです(参照:wikipediaの「土星」)。

惑星をしきつめる

さて、このような惑星たちを地球と月の間にしきつめてみましょう。ここで注意ですが「地球-月間の距離」は、だいたい「地球の中心から月の中心までの距離」のことです。ですから384,400kmの間に敷き詰めるのは「地球の半径と、水星~海王星の直径と、月の半径」ということになります。

この概念を表す図は以下の通りです。縮尺は実際の大きさ関係を反映していませんのでご注意ください。図の赤矢印が「地球と月の半径」です。その他の星は「直径」を足していけばいいと分かります。

計算を実行!

では計算(足し算)してみましょう!以下の数値を足せばいいと思います!以下の直径・半径はいずれも「赤道面で計った値」です。

足すもの 半径or直径(km)
地球の半径 6,378
水星の直径 4,879
金星の直径 12,104
火星の直径 6,794
木星の直径 142,984
土星の直径 120,536
天王星の直径 51,118
海王星の直径 49,528
月の半径 1,737

電卓でこれらの数値を足すと・・・396,058kmとなります!あれ?地球-月の平均距離384,400kmと比べると、11,658kmほどはみ出してしまいますね。おかしいですね。

土星は扁平!

しかし元の画像をよく見てみると、土星だけ傾いています。これは何か意味があるのでしょうか?傾けないとリングが引っかかるからでしょうか?

思い出してみると、上に書いたように土星は扁平なのでした。赤道で計った直径が120,536kmなのに対し、極方向に計った直径は108,728kmです。実に10%、長さにして11,808kmもの違いがあります。

先ほど、土星をヨコにして並べると「11,658kmほどはみ出してしまう」ことが分かりましたが、土星だけタテに(赤道面を90度回転させて)すると、11,808kmだけ短くてすみますので、差し引き11,808-11,658=150km余りますね!

土星の写真って、言われてみると少し横長な気もしますよね。リングがあるから、目の錯覚でそう見えるのかな・・・と思っていたのですが、実際に横長だったんですね。

出典:http://solarsystem.nasa.gov/multimedia/display.cfm?Category=Planets&IM_ID=7903

 

この写真に、縦横比9:10の楕円を重ねてみると、見事にはまりました。

ですので、土星だけ90度傾けて入れると、ギリギリ(150kmだけ余らせて)地球と月の間を埋めることができそうです。冒頭の画像のように45度ぐらいの傾きだと、たぶんはみ出すと思います。

いろいろなサイト

この記事を書くに当たって、いろいろなサイトを調べました。

日本語の記事はまずこの2つ。どちらのサイトも、少なくとも木星・土星・海王星を90度傾けています。どの惑星も自転のため、多少は扁平になっていますので、このようなはめ込み方をすればスキマが多く空くことでしょう。

画像はコチラです。土星が90度回転しているのはリングですぐ分かりますが、木星や海王星も、模様が90度傾いていますね。よく見ると金星も傾いているような・・・。

出典: http://buzzap.jp/news/20141102-all-planets-fit-between-earth-and-moon/

ただ、どちらの記事も2つ問題点があると思います。

  1. 地球と月の半径を算入していない。
  2. 記事中で挙げられている数値を全部足すと、同じく記事中で挙げられている「地球-月間の距離」を越えてしまう。

この2つめの問題点は、例えば次のようなところに現れています。

地球と月の間は38万4400km。この間に水星(直径4879.4km)、金星(直径1万2103.6km)、火星(6794.4km)、木星(14万2984km)、土星(12万536km)、天王星(5万1118km)、海王星(4万9528km)の7つの惑星を並べるとこの通り、ほんの8030kmのみを残して綺麗に並べることができてしまいます。

出典: http://buzzap.jp/news/20141102-all-planets-fit-between-earth-and-moon/

この文中に現れている水星~海王星の直径を足すと387,943.4kmとなりますので、同じく文中に現れている「地球と月の間」384,400kmを越えてしまうんですよね。なので「ほんの8030kmのみを残して」という部分とつじつまが合わなくなってしまっています。

 

この「はみ出す」ということに気づいておられるのは、次の方のサイトです。ただし、この方も地球や月の半径には言及されていません。

 

そもそも冒頭の画像も、よく見ると地球の表面と月の表面に縦線が引かれていますので、「平均距離384,400km」というのを取り違えている・・・本来は(ほぼ)「地球と月の中心間の距離」のはずですが、これを「地球と月の表面間の距離」だと思って計算をしてしまった・・・のかもしれません。

※もしかしたら私の方が勘違いしているのかもしれませんので、その際はどうぞご指摘ください!

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でもですね

他のサイトの揚げ足を取るのが目的でこの記事を書いたのではなくて、逆なんです。地球と月の間って、結構広いなあと以前から思っていたんですよ(コチラをごらんください)。その虚空に太陽系がだいたいピッチリ収まるなんて!!!!という感動を残したくて、この記事を書きました。

もちろん、「どうやって8,030kmとかいう数値を算出したんだろう」とか「土星だけ45度程度傾けているのは何か意味があるのかな」とか「別バージョンの画像を作った人は、何を思ってそうしたんだろう」とかいろいろ気にはなりますね。それは今回はよく分からないままでしたが・・・。

惑星を90度傾ければもう少しスキマが空きますから、そうすれば冥王星とか、その他類似の天体(準惑星)もそこに入れることができるでしょうね。太陽系の主要な天体が地球と月の間にスポッとはまるなんて、何とも不思議で素敵なことではありませんか?

※ただし、細かいことですが、月は地球の周りを楕円軌道で回っているので、地球-月の距離は毎日変わっています。一番近いとき(近地点)は363,304km、一番遠いとき(遠地点)は405,495kmです。今回の計算結果だと、近地点の時ははみ出してしまいそうですね!でも月は少しずつ地球から遠ざかっていて(年間3.8cmだそうです)、最終的には50万kmぐらいになるとか聞いたことがあるような(50万km以外の数値の出典はwikipedia)。ですから、いつかはすっぽり収まりますね。

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