地球と月を遠くから

地球と月を遠くから

 

以前、「地球と月のカンケイ」というお話で、月はけっこう小さくて遠くにあるんだということを書きました。距離と大きさの縮尺をそろえると、次のような図になるのでした。

ちなみに、月の公転軌道(月が地球を回る軌道)を図に付け加えると、次のようになります(月の公転軌道はほぼ円形ですが、これを斜め上から見下ろしたようなイメージです)。すでに月が見えにくいですね・・・図の右の方に小さ~く見えるのが月です。

こんな小さな地球と月を、遠くからバッチリ撮影した写真が公表されました。今回はこれを紹介したいと思います。

Advertisement

木星探査機「ジュノー」

撮影したのは、NASAが2011年8月に打ち上げた木星探査機「ジュノー」です。こちらが公式ホームページみたいです。

ここに計画の概要が記されていますが、2011年8月5日に打ち上げられ、2016年7月に木星に到達する予定だそうです。えらく長くかかるものですね・・・。そもそも木星って、どのくらい遠くにあるんでしたっけ?水・金・地・火・木・・・そう、地球から見ると、火星の1つ向こうにある惑星です。

木星はとっても遠い

太陽系を「上から」見下ろしたイメージはこんな感じです。内側から、水・金・地・火・・・と惑星が回っています。ちなみに太陽と地球の距離はだいたい1億5000万kmです。

ところが、その次の木星はすごく遠いんですよ。こんな感じです。木星と太陽の距離は、地球と太陽の距離の5倍余り、7億8000万kmもあるのだそうです。

ここにある、ジュノーの予定された軌道を、上の図に書き込んでみました。目分量なので大変不正確ですが、雰囲気をつかんでいただくことはできるのではと思います。ちょっと想像もできないような遠さです。

ジュノーが撮影した地球と月

さて、そのジュノーが8月25日に撮影した地球と月の画像が、NASAより公表されました。次の写真です。

地球と月 Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI

(Courtesy NASA/JPL-Caltech)

 

ボーッと見て「ふうん」と消費するだけだと大した感動はないのですが、これが我々の住んでいる地球、そして空に浮かんでいる月です。月は我々から一番近いところにある天体だけど、恐ろしいほどの虚空の彼方に浮いているのです。それを、さらにはるか向こうから撮影している。撮影できていることもすごいなと思います。そういったことを1分ぐらい考えてみると気分が違います。

 

公式発表によりますと、これは地球から966万kmのところから撮影されたもののようです。ん?966万?木星の公転半径7億8000万kmから比べると、まだ100分の1ぐらいですね。むしろ地球から見ると「すぐそこ」のような気もするのですが、それでももう、地球と月はこんなに「ぽつん」としてるんですね。

宇宙には、こういう想像を絶するスケールの話がごろごろしていますね。

 

ユピテルとユーノーとガリレオ

ところでこちらの公式発表によりますと、ジュノーには3つのミニチュア像が載っているそうです。画像をお借りしてこちらにも載せましょう。

ユピテルとユーノーとガリレオ Credit: NASA/JPL-Caltech/KSC

(Courtesy NASA/JPL-Caltech)

 

これは左から、ユピテル、その妻ユーノー、そして天文学者のガリレオです。ユピテルというのはローマ神話の主神で、ギリシャ神話のゼウスと同一視されているのだそうです(とここにありました)。ゼウスは聞いたことがあります。奥さんがいたんですね。なぜゼウス夫妻が木星探査機に?そしてなぜガリレオが?

 

NASAの説明を参考に考えますと、次のようなことかなと思います。

まず予備知識として、木星の英語名Jupiter(ジュピター)というのは、ユピテルの英語読みです。要するに「木星=ユピテル」なのです。

ユピテルは自分の周りに雲をはりめぐらせて姿を隠していましたが、女神であるユーノーはこの雲の中まで見通すことができたそうです。

もうお気づきと思いますが、ユーノーの英語読みが「ジュノー」なのです。計画の概要をよく読むと、

Juno will determine the global structure and motions of the planet’s atmosphere below the cloud tops for the first time, …

(ジュノーは、木星の表面の雲よりも下にある大気の全体の構造や動きを初めて決定し、・・・)

とあります(強調は当ブログで行いました)。ユピテルの姿を隠している雲を貫き通して、その真の姿を見ることが出来たユーノー。木星探査機ジュノーは、その名の通り、ジュピターの表面を覆う雲の中を探る探査機なのですね。

 

ガリレオは、ご存じの方も多いと思いますが、木星の大きな衛星4つを最初に発見した人です(これらの衛星—イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト—は「ガリレオ衛星」と呼ばれます)。確かに人類の中では最も優先的に木星探査機にお乗りいただくべき方、という気がします。

 

もう一度ミニチュアの像を見てみましょう。一番左のユピテルは手に稲妻を持っています。右のガリレオはもちろん望遠鏡を持っています。そして真ん中のユーノーは、真実を見る眼鏡を。2016年、ジュノーの目に映るジュピターの真の姿とはどのようなものなのでしょう。楽しみに待ちましょう。

Advertisement

参考

ほかのブログへ

にほんブログ村 科学ブログ サイエンスコミュニケーションへにほんブログ村 教育ブログ 理科教育へ自然科学 人気ブログランキングへ

↑クリックするといろんな科学ブログを探せます。ついでに「カガクのじかん」のランキングも上昇します(ありがとうございます)。

宇宙カテゴリの最新記事

Verified by ExactMetrics