地球の裏側まで行くのにかかる時間のお話

地球の裏側まで行くのにかかる時間のお話

前回の記事は、ボールを時速28000kmぐらい(秒速7.9km)で撃ち出すと、落ちても落ちても地面に達することはできずに地球を1周してしまう・・・という内容でした。この速さを「第一宇宙速度」というのでしたね。今月はこの続きで、「地球の真裏にボールが届くまでにかかる時間」を計算してみましょう。

 

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所要時間を出すには?

これは「地球を半周する距離」を速さで割れば求められますね。地球の直径は約12800kmですから、半周の長さはπ×12800÷2で求められます。計算してみると、半周の長さは約20000kmとなりますので、これを速さ28000km/時で割ると、

20000km ÷ 28000km/時 = 0.7…時間

となります。1時間は60分ですから、これは「およそ40分」ということになりますね。あっという間ですね。地球の裏側まで40分で届くなんて・・・。

 

別の方法も

ところで、地球の真裏までボールを届けるためには他の方法もあります。それは「地球の真裏までまっすぐな穴を掘って、そこにボールを落とす」ということです。そんなにまっすぐ穴を掘れるのか・・・とか、そもそも地球の中は高温でどろどろしてるって聞いた・・・とか、いろいろなことが気になるでしょうけども、何とかしてうまい具合に掘れたとしましょう。穴さえ掘れれば「時速28000km」などという非常識な速度でボールを撃ち出さなくてもよく、ただ単に穴にボールを落とせばよいのです。ぽとりと。

穴に落ちたボールは、最初は地球の中心に向かって落ちていきます。ボールは地球の中心向きにかかる「重力」という力で引っ張られるためです。重力のおかげでボールはどんどん速くなって、地球の中心をビューッ!と通り過ぎます。

地球の中心を通り過ぎた後は、重力の向きが逆になります(図を見てみてください)ので、ボールは減速を始めます。地球の真裏に着いたころには、ボールの速さはちょうどゼロになっています。ですから受け止める側は楽ですね。

 

この方法だとボールが届くのにかかる時間はどのくらいでしょうか。こちらの計算は結構難しいので、結果だけお知らせしますと・・・なんと驚くべきことに、こちらも「およそ40分」となります。しかも、これは最初の方法(第一宇宙速度で地球を半周する方法)と「大体同じ」なのではなくて、「計算上はぴったり同じ」になるんですよ。

 

最後の計算をきちんとできるようになるためには、高校で「物理」という科目を勉強するといいですよ。よく「重力列車」というタイトルで題材になっています(地球の裏側まで40分で到着する列車です!)。スッキリ計算で答えが出たときには、とても感動しますよ。

ちなみにアニメーションで表現すると、次のようになります。ここまでの説明には書かなかったのですが、「第一宇宙速度で回るボール」の動きをトンネルに射影すると、「トンネルを通るボール」の動きと一致するんですよ。これはこれでなかなか面白いなあと思います。

 

高校生用?

高校で物理を勉強している人は、「重力列車」や「等速円運動」の勉強にからめて、問題形式で解いてみると面白いのではと思います。もしかしたら高校の先生も検索でたどり着かれるかも・・・と思って、いろいろ書いたpdfをコチラに置いています。よろしければどうぞ。

 

ルイス・キャロルと重力列車?

本当かどうか分からないのですが、こちらのサイトによれば、重力列車のアイデアを考えついたのは「不思議の国のアリス」の著者ルイス・キャロルなのだとか?本当ですかね?本当だったら味わい深いですね。ルイス・キャロルは本業は数学者なんだそうですね(どれが本業かよく分かりませんが・・・)。

私が以前聞いたことのある話は次のようなものです。ルイス・キャロルが「不思議の国のアリス」を女王に寄贈したところ女王はこれをいたく気に入られ、「次の本が完成したらまた送ってたもれ」と仰った。そしてルイス・キャロルは仰せの通り、自らの次の著書を恭しく女王に進呈した。数学者として著した「線形代数」の本を・・・。「ほんまかいな~」と思っていたのですが、wikipediaの記事には「事実無根」と書かれてあります。事実だった方が面白いと思うんですけどね!以下wikipediaより引用です。ドジソンというのはルイス・キャロルの本名です(ルイス・キャロルというのは作家活動を行うときのペンネームだったんだそうです)。

ドジソンはまた彼自身の本名により、多数の数学論文や著書を発表している。不思議の国のアリスが好評を博し、ヴィクトリア女王が他の著作も読みたいと依頼したところ、『行列式初歩』という数学書が送られてきて面食らったという逸話が残っている。しかし、キャロル本人はその逸話が事実無根であると否定している。[7]

 

出典

この記事はちゅーピー子ども新聞 93号(2013年9月15日発行)7面に掲載した記事を加筆修正したものです。

 

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