ふつうの筆算とマトリックスかけ算

ふつうの筆算とマトリックスかけ算

少し前にこんな動画を見かけました。英語のタイトルの動画ですが、何やらかけ算の方法のようです。

「23×12=276」という結果を導くのに、奇妙な線を使って交点の数を数えているようですね?

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何とこれは日本の方法!

動画のタイトル「How the Japanese do multiplication」は「日本人のかけ算のやり方」という意味です。てっきりインド式か何かだと思い込んで動画を見ていたのですが、日本式だとのこと。しかしこんなかけ算の方法、知りませんよね・・・。もしかして最近は学習指導要領が変わって、こんな線でかけ算をするようになっているのでしょうか?

などと結構うろたえたのですが、よく考えてみると分かりました。以下をご覧ください!

動画ではいきなり線を引いていますが、補助のために「2」「3」「1」「2」の数字を添えました。また、動画では線と線の交点をひとつふたつ・・・と数えていますが、それを「○→数字」という形で示しています。

動画とちょっと違う順で説明しますね。図の右から説明します。

  1. まず3本と2本の交点は6個です。
  2. 3本と1本の交点3個と、2本と2本の交点4個、合計7個です。
  3. 2本と1本の交点が2個あります。

これを左から並べて、「276」がかけ算の答えになる・・・という方法です。

どこが日本的?

この方法のどこが「日本の方法」なのでしょう。我々はふつう「筆算」ということをしますよね。実はよく考えてみると、我々の筆算と先ほどの「交点カウント法」(と呼ぶことにしましょう)は同じことをしているんです。

ちょっとふつうの筆算を見てみましょう。交点カウント法と比較しやすいように数字に色を付けてみました。

普通の筆算の順に説明しますね。

  1. 2×3=6です。
  2. 2×2=4と1×3=3を書きます。
  3. 1×2=2を書きます。

これを下向きに足せば(実際には足すのは緑数字だけですが)、答えの「276」が出てくるという寸法です。

交点カウント法は、この筆算をわざわざ線で書き表したものだと言えますね。23×12ぐらいだと「面白いな」で済みますが、「78×56」などを想像してみると、たくさんの線を引かないといけないので少し不便かもしれません。

交点カウント法の改良=表で左下に足す「マトリックスかけ算」

ところで交点カウント法の問題は、主に「線をたくさん引かないといけないこと」ですから、そこを改良してみるとマシになります。次のような形式です。同じ「23×12」を題材にしてみます。

線を引く代わりに、例えば「2と1の交わるマス目に2×1を記入する」というルールで数字を埋めます。さっき足しあわせた紫数字は、この表では「左下に向けて足し算をする」という感じになります。これで表中に出てきた数字を、右下から順に小さな位に並べれば答えが出ます。

表を作って足していくので「表で左下に足す法」などという名前を思いついたのですが、さすがに覚えにくいですよね・・・。すこし格好をつけて「マトリックスかけ算」なんていかがでしょうか?

結局ふつうの筆算がいいのか?

やはり昔から使われている方法ですから、ふつうの筆算の方がいいんじゃないかという気もするのですが、この「マトリックスかけ算」にも多少メリットがあります。それは「繰り上がりが生じる場合に、数字を小さく書かなくてもよい」という点です。

例として「78×56」を、ふつうの筆算と「マトリックスかけ算」の両方で試してみます。次の図をご覧ください。

筆算の方はまあ皆さん慣れてらっしゃると思いますが、難しいのは「繰り上がりの数字を小さく書いておいて、そこに次の計算結果を足したものを大きく書く」という部分ですよね。

それが「マトリックスかけ算」だと、まず繰り上がりを気にせずにかけ算の結果をマス目に埋めていけばOKです。そして数字を左下向きに足していき(図中の紫)、最後に出てきた数字を「右下から順に小さな桁から1桁ずつずらして並べ、足す」ということで答えが出ます。

これ、結構いいですよ。繰り上がりに比べると字を大きく書けるというのが好感触です。また、かけ算の順序を気にしなくてもよいというのも気楽です。もうちょっと大きな数字でやってみましょうか。「456×789」を二つの方法で比較してみましょう。

いかがでしょう?案外楽だったりしませんか?

 

もっとも、初めてかけ算を習う場合には、繰り上がりの意味を体感してもらったりしないといけないので、伝統的方法の方がためになるとは思いますが、やがて筆算が単なる機械的作業になってきたら、こちらの「マトリックスかけ算」に移行してもいいような気がしなくもありません。

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