皆さんは待ち合わせの時間、守る方ですか?それとも、しょっちゅう遅刻してしまったり・・・?
例えば30分も遅刻をしてしまったら、たぶん理由を説明して謝りますよね。では1秒だけ遅刻したらどうでしょう?きっと理由なんて説明しないし、そもそも遅れたことにも気づきませんよね。
では、1秒というのは取るに足らない時間なのでしょうか?
1秒の重み
もちろん違いますね。自動車を運転する方なら教習所などで習うことですが、時速50kmで走る車は1秒で約14mも進みますから、1秒の遅れが事故につながったりもしますよね。
他にも、すぐ思いつくのはスポーツの世界でしょうか。オリンピックなどの中継を見ると、0.01秒単位で記録を争っていますよね。例えば男子100m走の世界記録は、1968年のハインズ(9.95秒)から2008年のボルト(9.69秒)まで、40年もかけて記録を0.26秒縮めています。2018年現在でも世界記録はボルト(9.58秒; 2009年)のようですね。すごい選手ですね。
国際陸上競技連盟からダウンロードできるデータ「Berlin 2009 IAAF Statistics Handbook」を調べてグラフにしてみました(これの202ページ目から記録が載っています)。ボルト選手が1人で激しくタイムを縮めていることが分かりますね。すごいですね・・・。
ついでに、もっと昔からの記録もあわせてグラフにしてみました。昔の記録は手で計測していたらしく、誤差が大きいので、誤差を表すタテ棒をつけています。
すごく正確な時計
私たちの生活では、これ以上正確に時間を計る必要はないような気がするのですが、より正確に時間を計る研究は世界中で進んでいて、現在では0.000000000000001秒まで正確に計ることができるそうです。
これは「原子時計」という、家庭にある普通の時計とは全然ちがう道具を用います。この「0.000000000000001秒」という精度は、言いかえると「3000万年で1秒ずれるぐらいの正確さ」ということです。地球は46億年前に誕生したと考えられていますから、地球が誕生したときから使用していたとしても3分もずれないという正確な時計です。
いろんな時間の長さを比べてみましょう。
何のために?
ところで、どうしてこんなに時間の精度を高めることが必要なのでしょうか?実は、ご存じカーナビにも原子時計が役に立っているのです。
カーナビでは現在位置を調べるために、GPS衛星という人工衛星からの電波を受信しています。もしGPS衛星の時計が家庭の時計(クオーツ時計)と同じぐらいの精度しかなかったらどうでしょう。
日本時計協会のQ&Aによりますと、クオーツ時計は1ヶ月に20秒程度の誤差を生じるそうですが、これだと精度は10万分の1秒ぐらいでしょうかね?だとすると、電波は1秒に約30万kmも進みますから、距離にして30万×(10万分の1)=3kmものズレが生じてしまいます。これでは全くカーナビが役に立ちませんね*1。
こんなことが起きないように、今のGPS衛星は高精度の原子時計を搭載しています。他にも、「相対性理論」まで使って時刻の補正をしたりするそうです。こんなすごい科学技術がこんな身近な生活に入り込んでいるとは・・・。驚くほかありません。
出典
この記事はちゅーピー子ども新聞 2009年8月号(8月1日発行)10面に掲載した記事を加筆修正したものです。
参考
- アメリカ国立標準技術研究所
- 国際陸上競技連盟
- 過去の記録をダウンロードできるところ
- 特に用いたのはこれの202ページ目以降
- 日本時計協会(こんな社団法人があったなんて・・・)
- GPS測量技術(佐田達典 著)
- wikipediaで調べたい方はコチラ
- 地球大進化1(NHK出版)
- 自然科学は権威がこけていく物語 佐藤文隆氏が考える、科学の勃興と発展
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*1:実際には、ズレを補正するための別の仕組みがありますから、こんなにはズレません。でもやはり時計の精度が悪いと、位置の誤差が大きくなるのは事実です。