ちょっと不思議じゃありませんか?この空き缶、すごく斜めなのに倒れていませんよ。
「転がる=転ぶ?」の記事でお分かり頂けたかと思いますが、ものが転がったり倒れたりしないためには、「重心の真下を支えてやる」ことが必要なのでした。言い換えると、重心の真下が床に接していないとダメなのです。
この空き缶、どう見ても、重心が床と缶との接点より前にはみ出してません・・・?そしたらこのリー君みたいに転んでしまうのでは・・・。
もちろんヒミツが
もちろん、仕掛けがあります。とっても簡単な仕掛けなんですけどね。お分かりでしょうか?ガムテープとかじゃなくて・・・。
そう、中に水が入ってるんです。
覗いても見えませんけども。
力のかかり具合
どんな風に力がかかっているのか、矢印を描いてみましょう。
もし、水の入っていないただの空き缶ならば、次の図のようになるはずです。重心は缶のほぼ真ん中になりますから、白い矢印のような重力がかかります。一方、抗力は缶が床に触れている部分にかかりますから、ピンクの矢印のようになります。
しかし、ここに水が入っているのです。傾き具合をよく見ると分かりますが、缶が床に触れている点から上向きに垂直に線を引くと、右側の方に少し多く水が入っています。
つまり、水の重心は、次の図のように少し「後ろ側」になります。図の青い×印のところです(図では、水の重心と点線とのずれを誇張しています)。
ということは、缶と水をあわせた重心(全体の重心)は、白い×と青い×の間ぐらいになります。缶よりも水の方が重い(たくさん入れた)ので、ちょうど真ん中よりも少し青い×の側にずれた位置が全体の重心になります。
これで、次の図のように、重力の真下から抗力がかかるようになりました。
やってみると
以上で種明かしは終わりです。分かってみると大したことないような気もしますが、ちょうどいい量の水を入れて、ちょうどいい具合に傾けるのって、結構大変だと思いますよ。実際には傾きの角度は、缶の底の部分の曲がり具合で決められてしまうでしょうから、傾きの角度にあわせて水の量を調節しないといけません。
おひまなときに試してみられてはいかがでしょう?
ちなみにこれ、私が思いついたんじゃないんです。大学受験を間近に控えた高校3年生の子が、ある日急に思いついたらしくて・・・。転びそうで転ばないというあたりが、ある意味縁起がいいような気もします。受験での成功を切に祈ります。
空き缶シリーズへのリンク
【1】空き缶が転がらない|【2】続・空き缶が転がらない|【3】一旦まとめ|【4】転がる=転ぶ?|【5】空き缶が倒れない
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