「けし粒はいつなくなる」の記事で、1辺20kmの城の中にけし粒を詰め込むと、なんと640垓個(64,000,000,000,000,000,000,000個)にもなるという計算をしましたね。ところで、原子が640垓個あるとどのくらいの大きさになるのでしょう。原子はけし粒よりもだいぶ小さいはずですが、さすがにこんなにたくさんあったら・・・どうでしょう?
具体的にイメージして、クイズにしてみましょう。わりと手に入りやすい「アルミニウム」にしましょうか。料理に使うアルミホイルや、1円玉の原料です。
ではクイズです。アルミニウムの原子が640垓個集まると、どのくらいの大きさになるでしょう?3択です。
(1)一抱えもあるようなアルミのかたまり
(2)アルミホイルの1回分ぐらいの使用量
(3)目で見えないぐらいのアルミの粉
以下では、計算を簡単にするために「600垓個」の原子について考えることにします。
アルミホイルの厚み
こういうクイズは、大・中・小とあったら「中」について検討してみるのがいいでしょう。いきなり正解することもありますし、違っていても「大」か「小」かの見当が付きます。
さて、まずアルミホイルの厚みを調べねばなりません。これは商品によって違うと思われますが、手元にちょうどアルミホイルがありましたので、見てみましょう。
箱の裏側に、ありました。「厚さ12マイクロメートル」だそうです。おお、こんなところに「マイクロメートル(μm)」が使われていますね。
アルミホイルに原子がぎっしり
では、アルミホイルに600垓個のアルミニウムの原子が詰まっている様子を想像しましょう。アルミニウムの原子も、ケイ素と同じくらいの大きさのようですので、直径0.2nmだと考えましょう。そして、本当はまるい感じの形なのですが、それだと計算が難しいので、1辺0.2nmの立方体の形をしていると考えましょう。
まず、厚さ12μmの中に、アルミニウム原子が何層並ぶのかを計算しましょう。12μm=12,000nmですから、次のようにして計算できます。
アルミニウム原子の層の数 = 12μm÷0.2nm
= 12,000nm÷0.2nm
= 60,000層
600垓個の原子を均等に60,000枚の層に分けるので、1層あたりの原子の個数は次のようになります。
1層あたりの原子の個数 = 600垓個÷60,000
= 60,000,000,000,000,000,000,000個÷60,000
= 1,000,000,000,000,000,000個
うーん、ちょっとすごい数ですね。「100京個」です。
この100京個の原子が正方形状に並んでいるとすると、1辺に並ぶ原子の個数は何個なんでしょう。こういうときのために平方根(ルート)があるんですよね*1。
1辺に並ぶ原子の個数 = √1,000,000,000,000,000,000
= 1,000,000,000個
となります。「10億個」ですね。
さて、10億個のアルミニウム原子がずらりと並んだ長さはどのくらいになるんでしょう?アルミニウム原子は1辺0.2nmの立方体だと考えているので・・・
10億個のアルミニウム原子の長さ = 1,000,000,000×0.2nm
= 200,000,000nm
= 200,000μm
= 200mm
= 20cm
となります!「小さな量のあらわしかたのお話」が結構役に立ちますね。
つまり、600垓個のアルミニウム原子は、20cm×20cmのアルミホイルの中に収まってしまうということなのです!ですから、クイズの答えは(2)ですね!
なお、毎度のことですが、原子の大きさもややいい加減ですし、立方体として扱うことも誤差を招きます。ですから、「まあ大体こんな感じかな」という程度に思ってくださいね。ちなみに高等学校の「化学」の単元では、こういう計算をきちんとする技術を学びます。
けし粒と原子
ここで落ち着いて振り返ってみましょう。1辺20kmの巨大な城(高さはエベレストの2倍以上です!)に0.5mmのけし粒をザーッと流し込むと、約600垓個になるのでした。ところが、同じ600垓個のアルミニウム原子でアルミ箔を作ると、わずか20cm四方の大きさにおさまるのです。
原子の小ささを表すエピソードと言えるのではないでしょうか。ぜひ、今度アルミホイルを使う際には、この途方もない数と、とてつもない原子の小ささを想像してみてください。
けし粒シリーズへのリンク
【1】けし粒はいつなくなる|【2】天女が岩をなでたなら|【3】けし粒と同じ個数の原子
μmとかnmについては「小さな量のあらわしかたのお話」
参考
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*1:例えば、100個の原子が正方形状に並んでいるとすると、1辺に並ぶ原子の個数は√100=10個と求められます。10×10=100ということです。