はやぶさが帰ってくる

はやぶさが帰ってくる

宇宙探査機「はやぶさ」が帰ってくる頃に書いた記事です。一体、「はやぶさ」はどこまで行って帰ってきたのでしょうか。

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宇宙に行って、帰ってくる

2010年4月の下旬、山崎直子宇宙飛行士が国際宇宙ステーションからスペースシャトルで帰還するというニュースがありました。

以前「空気のお話」で紹介しましたが、国際宇宙ステーションは地上約400kmのところを回っている施設です。これは図1-Aのように「地面すれすれ」のような高さですが、宇宙まで行って戻ってくるというのは何ともスゴスギです。

宇宙からの帰還といえば、1960~70年代アメリカの「アポロ計画」をご存じでしょうか。これはなんと人間を乗せた宇宙船を月に着陸させ、月面を調査して地球に帰るという計画でした。「アポロ11号」をはじめ6機の宇宙船が月に着陸し、地球に戻ってきました。

また、旧ソ連の「ルナ計画」では、無人探査機が8機、月面に着陸し、うち3機は地球に戻ってきているそうです。

でもちょっと待ってくださいよ。「空の向こうのお話」で紹介したように、地球と月は38万kmも離れています(図1-B)。しかも地球も月も動いています。月まで行って着陸して、また地球に戻ってくるって・・・想像できますか?こんなことをやってのけてしまう人類は、本当に底知れない力を持っているとも言えますね。

「はやぶさ」の旅路

さて「はやぶさ」は2010年6月、実に7年ぶりに地球に戻ってきた宇宙船です(人は乗っていません)。小惑星「イトカワ」に着陸し、石を採取し、再び離陸して地球に戻ってきたのです。

イトカワは1905年と2004年に200万km程度にまで地球に接近しましたが、これほど近づくことはまれですし、遠いときには4億kmぐらい離れます。

・・・急に数字が大きくなりましたね。ちょっと図2(イトカワと地球の軌道)を見てください。この図では、38万km離れた地球と月でさえ、くっついた点のようにしか見えません。もう少し大きい太陽(直径140万km)でさえ点のようになっています。それほど大きな図なのです。

では「はやぶさ」はどうやってイトカワにたどり着いたのでしょうか。2004年に200万kmまで近づいたところで打ち上げて、チョイと着地したんだろうって?とんでもない。地球も月も「点」になる世界ですから!

ちなみにイトカワはジャガイモのような形で*1、長さがわずか500mぐらいなので、地球と比べても点のような大きさです。こんな小さな地球とイトカワがそれぞれ猛スピードで(秒速30kmぐらいで)動いていますので、慎重に慎重を重ねて飛ばなければなりません。

具体的には、次の図3のように、最初の1年は地球と一緒に太陽のまわりを回って、「地球スイングバイ」という方法でイトカワと並走する軌道に移り、1年半かけて位置を微調整しながらやっと着陸したのです。

赤い線が、「はやぶさ」のたどった道のりです。指でなぞってみてください。ちょっと気が遠くなりませんか?

「おかえり」と言える日まで

イトカワにたどり着くまでにも、離陸してからも、数え切れないほどの故障・不具合があったそうです(例えばプレスリリースをご覧ください)。そのたびに知恵をしぼって乗り越えてきたスタッフの皆さんは、本当にすごいことをされたと思います。

月以外の天体に宇宙船が着陸して、再び離陸したのは世界初のことだそうです(YMコラムより)。もちろん地球まで戻ってくればそれも世界初。想像を絶する偉業・・・というのは言い過ぎでしょうか。

「はやぶさ」は6月13日、オーストラリア上空に帰ってくる予定です。イトカワで採取した石が入っていると思われるカプセルを、砂漠に落下させる予定です。この最後の仕事までうまくいくよう、見守ってみませんか?

こんな動画も

JAXAから「祈り」という動画が発表されています。30分近くある大作ですが、実際に「はやぶさ」が撮影した画像も盛り込まれていて、「はやぶさ」のミッション概要がよく分かる映像になっています。

それから、youtubeに「探査機はやぶさにおける、日本技術者の変態力」なる動画を見つけました。「はやぶさ」が陥ったピンチ、それを切り抜ける起死回生の策、という構成になっています。短くよくまとまっていて、感動的です。

ただ、まさかこの動画のことを知ってというわけではないと思いますが、川口淳一郎プロジェクトマネージャは「第10回 宇宙科学シンポジウム(2010年1月7・8日)」にて「誤解してはならない.これらは不具合である.」と記されたスライドを用いて講演されたようですね。ピンチを切り抜けることも大切だが、それ以上に、ピンチに陥らないことが重要だということでしょうか。

スライドはここ(pdf)にあります。件のページだけ抜き出してここで紹介します。

2018年現在、地球に向けて帰還中の「はやぶさ2」ではこれらの問題が解決されているのでしょう、今まで大きなトラブルに関するニュースは特に聞きませんね。何もないことが本当にすごいです。

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参考

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*1:JAXA内では「ラッコ」と呼ばれていたようです(→こちら)。しかしジャガイモ派からはこんな比較も。

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